作られた自分が崩壊してからが『本当の自分』の再構築の始まり

「アイデンティティークライシス」
という言葉をご存知でしょうか。

アイデンティティークライシス(identitycrisis)

自己喪失。「自分は何なのか」「自分にはこの社会で生きていく能力はあるのか」という疑問にぶつかり、心理的な危機状態に陥ること。
出典:コトバンク

 

‥‥思春期の頃にぶつかる
「自分は何者なのか」
という悩みに似ていますね。

大人のあなたにとっては、
もう遠い過去の悩みかもしれません。

 

でも、その悩みは
思春期で本当に完了したのでしょうか。

結局よくわからず、
うやむやなまま流れされて
忘れてしまっただけだとしたら、
今、大人になったあなたの
悩みの根本的な原因が、
そこにあるかもしれません。

 

今回は、自分の崩壊についてのお話。

私の当時の絵日記を挟みながら、
痛い思い出を書いてみようと思います。

 

2011年、私は人生を変えるため、
フランスのパリへと飛びました。
30ギリギリ手前、29歳の時です。

それまで勤めていた会社を辞めて、
お金も人のツテもなく、
フランス語どころか英語も話せないまま、
えいやー!の勢いだけで
単身、憧れのフランスに行きました。

しかも、観光で数日間とかではなく、
ビザなしで最長滞在できる3ヶ月間で
飛行機の往復の切符を買ってしまったのです。

‥‥今、書いていて思いました。

この人、無謀です。

 

そして、そんな人生の大きな大冒険に出て
旅先のフランスで沢山の幸運に恵まれて、
人生は好転。幸せになりましたとさ☆

‥‥となる脳内シナリオだったのですが、
現実は

見事にボロボロ、惨敗でした。。

これといった輝かしい収穫もなく、
手ぶらでの帰国です。。

 

「現地で生の言葉や文化に触れ、
フランス語をマスターしてきます!」

「芸術の聖地で沢山のアートに触れ、
自分の作品のチャンスを掴んできます!」

「帰国してからフランスの素敵なものを
輸入販売するなどビジネスの可能性も?」

「なんなら、フランス人と恋に落ちて、
国際結婚までしちゃうかも??」

などと聞こえのいいことばかり並べて、
全てを手放し賭けに出たのに、
豪語していた目標は何ひとつ得られず。

 

「大丈夫、行けばなんとかなるよ!」

は、なんとかならなかった時の
ダメージが大きいです。

20101219

↑‥‥あぁ、この当時の絵日記の
キラキラ浮ついた自分を叱ってやりたい。。

すごすごと日本に戻り、
年齢は30歳になっていました。
今から再就職しようにも、
履歴書を書こうとして手が止まりまます。

エステ、事務、派遣など職歴もバラバラ、
特別な資格も持たず
大学も出ていない30過ぎの自分に、
怒りというか呆れというかの気持ちで

「今まで何やってきたの?」

と問い詰めたくなりました。

 

生きていることが恥ずかしいやら
情けないやら後ろめたいやら。

人生に失敗した
中身のない30の女(独身)』

という残念なレッテルが
いよいよ身近になってきました。

 

大きいこと言って旅立った手前、
恥ずかしくて友達にも会わせる顔がなく、
一ヶ月ほど、存在を消すかのように
家でひっそりと一人鎖国していました。笑

その時、私は初めて
自分のことを見つめようとしました。

当時、15年分書いてきた
過去の自分の絵日記を読み返して。

そこで読んでいて気付いたのは、
無理やりポジティブに書いて
自分を上げようとしていたり、
誰かに肯定されるために
いいことばかり言おうとする自分の姿が、
動かぬ証拠としてありありと
絵日記の上に書かれていたことでした。
(あんまり直視できないレベル)

 

自分が書いてきた言葉の薄っぺらさが、
今ならすごくわかる。。

なぜならそれらの言葉が、
「本当は何もない自分」を隠すための
綺麗事だったと
もう知っている自分が
読んでいるから。

その後「自分」の崩壊が起きると知らず
必死で演じて取りつくろっている
当時の自分の姿に、
いたたまれない気持ちになりました。

日本では、
「さわさんならできるよ!頑張って!」
と応援してくれる人が多かったけど、
フランスでは、皮肉まじりに
キツイことを言ってくれる人が多かった。

その辛辣な洗礼は、
自分でも必死で隠して見ないようにしていた
自分の中身が空っぽだという自信のなさ
浮き彫りにしてくれました。

私が素敵に見られたかったのは
ポジティブな理由だと思っていたら、
根本はもっとずっと
脆いものでできていたんです。

もうスカスカのジェンガみたいな状態です。
中身なんてないし、穴だらけ。

それでももっと上に高く高く
積もうとすることばかりに必死で、
足元なんて簡単にすくわれて。

しかもそのジェンガのパーツは、
テレビや雑誌の情報や
他人の言葉で構成された、
偽物のつぎはぎのパーツなわけです。

 

「これが自分だ!」と思って
長年積み重ねてきたものが、

本当は自分なんてどこにもなかった‥‥
と気付いてしまった時の愕然とした気持ち。

「自分がどこにもない」って、
全てが不確かな中で生きた心地がせず
ものすごく不安になるものです。

こういう時、漫画なら
人生のリセットボタンとか
不思議な生き物が出てくるんですけどね。笑

でも残念ながら、ここは現実でした。

 

本当は自分に自信がなくて、価値がなくて、
そんなんじゃ
きっと人が離れていってしまうから、
本当は素敵でもすごくもないことを
誰にもバレたくないから、
「いいね」って認められるために
必死で振る舞って
本当の自分でない誰かになろうとして。

 

本当の自分からどんどん分離していくので、
心の内部の見えないところで
無理や問題が生じるわけです。

そのごまかしの限界を超えた結果が、
今回の挫折だったわけです。

 

‥‥でも、
この挫折はいつかは来ることだったなと
本当はどこかで納得もしていました。

『自分を一度崩壊させる』
というとちょっと気が引けますが、
正確には、
「自分だと思い込んできた
自分じゃないものを外す

ということなのだと思います。

 

これが自分(アイデンティティ)だ
と思っていた自己のジェンガが崩れ去って、
水増しで作ったパーツは粉々で。

でも、
そんな形も残ってないがれきの山の中に、
よく見ると崩れず形を残している
パーツがいくつか残っているんです。

そしてそのパーツの名前が、
『本当の自分』なんだと思います。

 

「あー、せっかく高く積み上げたのに
全部崩れちゃった。

でも今度は
スカスカの異物や偽物のパーツじゃなくて、
原石の『本当の自分』というパーツで
もう一度積み直して、
ちゃんと自分を生きてみよう」

 

ここから人生の選択基準が、
「他人の目」から、
「自分」にシフトして生き始めました。

「すいません、
でもこれが『私』なんです

だから、もしこんな私でも
好きだと思えたならその時はよろしく

と笑って言える自分になったら、
自分に嘘をついてるモヤモヤ感
なくなりました。

 

多分これが、
本当の自己肯定感なんだと思います。

嘘の自己肯定は、
自分の問題を深刻化させるだけでした。

(ちなみにこの気付きの後に受けたのが、
例の面接です。笑)

本当の自分で生きること。
それは、自分の生き方に責任を取る
ことでもあると思います。

それができるからこそ、
『本当の大人』として
芯が通ってくるんだなと思います。

だから凛としていてカッコいい
いい目をした大人になるのだと。

 

大人になるほど、自分を壊すのが怖い。

その気持ちは私も痛いほどわかります。
身をもってわかっています。

でも、それを避けて「自分を変えたい」
と言っているうちは、
残念ながら変わりません。

 

一度、作られた自分を壊す。

そして今度は自分の原石を軸にし、
本当の自分を再構築していくこと。

それがいわゆる
「アイデンティティ、自己の確立」
なのだと思います。

 

‥‥でも、
「自分を壊す」「自分と向き合う」って
どうすればいいんだろう?

そのやり方を模索し続けて、
それから5年後、
今の『大人のための絵日記学』
作ったのだと思います。

自分で生きることを
本当は今も諦めたくない大人へ。

思春期の時に
未完了のままになっている課題の
続きをしませんか?

 

▼関連リンク

自分がないと気付いてしまった…アイデンティティの崩壊後はどうしたら?

 

「自分」という未履修科目の
続きはまずこちらから

 


2020-08-22 | Posted in さわ's絵日記(ブログ)2 Comments » 

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コメント2件

 Pisa | 2020.09.03 3:43

初めまして。
「作られた自分が崩壊してからが、本当の自分の再構築の始まり」、興味深く読まさせて頂きました。
私も、アイデンティティ崩壊中です。
というか、まだ崩壊しきっていないのでしょうか…
あんなに苦しかったのに…笑

 管理人 | 2020.09.04 9:45

Pisaさま
コメントありがとうございます!
こんな私の失敗談でも、楽しんでいただけたのなら幸いです。

アイデンティティ崩壊中、言い換えると「とても大事な時期」ですね。
渦中は苦しいから、もう終わりってことにしたいんですよねぇ^_^;
崩壊しきったかどうかって、終わって今までの人生の流れが大きく変わったかどうかが一つの目安になります。
内面的には、「見たくない自分」への抵抗がやむので、地に足がついて腹が決まるという感覚が、自分の中に生まれます。

アイデンティティの崩壊をきちんとやりきって、初めて内面も『本当の大人』になる。
そう言う意味では、精神的な自立をするための、大事な通過儀礼なのかもしれませんね。
Pisaさんの再構築、応援しています!

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