絵を描く時に使う視点を切り替える目を、自分の心の観察に応用する
先日、絵日記講座第二話の『絵力編』を
開催しました。
大人が「絵日記」を書くとなると、
まずハードルに感じてしまうのが
絵を描くことだったりします。
あなたは絵は得意な方ですか?
それとも苦手ですか?
私の講座に来る生徒さんも、
絵が得意だから絵日記を始めた‥‥
という人ばかりではありません。
ただ、絵日記学における絵の役割って、
美術の授業や絵画コンテストのように
人に評価される作品を作るためではなくて、
言葉になりきらなかった自分の気持ちを
言葉以外の方法で表し、
自分をより深く知るためだったりします。
‥‥とはいえ、
「そういうわけだから、
ヘタでもいいからまずは描いてごらん」
と言われても、
実際に絵を描いてみると
「なんか、描きたかった絵と全然違う‥‥
絵が崩れていて見てらんない‥‥
やっぱり私ってヘタクソだー!」
って、イライラしたり
悲しい気持ちになっちゃったりしますよね。
こんな思いをしたくないから、
自分の中で苦手にして遠ざけてきたわけで。
でも、そもそもなぜ絵がヘタなんだろう?
なんでうまく描けないんだろう?
って考えたことはありますか?
手先が不器用だから?
才能やセンス、絵心がないから?
絵を描いてきた環境や経験が違うから?
そんな理由で片付けて、
諦めてしまうのはもったいないんです。
だって本当は、
「絵がヘタ」なんじゃなくて、
ただ絵の正しい描き方がわからないだけ
だったりしませんか?
今回は、絵が苦手な人に向けて
絵が苦手な人の絵が歪んでしまう原因と、
練習することで得られる大人の視点
についてお話ししたいと思います。
絵が上手い人って、
「見たままを描いただけだよ」
と言うんですが、
自分も同じものを見ているはずなのに
全然違うものが描き上がっていく。
「何が違うのか、
何がいけないのかがわからない‥‥」
そうすると改善のしようもないから、
不器用とか絵心がないといった言葉で
この謎を片付けてしまいがちです。
表現の引き出しやテクニックというのは
絵の形が取れるようになってきた後の話で、
まずは「目の使い方」に違いがあるんです。
たとえば絵が苦手な人って、
描いている時に見ている視野が
とても狭くなっていたりします。
今描いている一部分だけを見ていて、
周りとの距離や大きさの関係が
見えなくなってしまうんですね。
すると全体のバランスが崩れていることに
気付かずどんどん歪んでいってしまう。
そして完成し離れてみた時に初めて
「うわ‥‥」とショックを受けたりします。
絵が描ける人って、
「手元」と「全体」の二つの視点を
無意識に何度も切り替えて描いています。
バランスを確認するためです。
だから、
上手い人は最初から間違わないのではなく、
崩れたとしても途中で気付き、
修正して完成に近付けられるんです。
↑ 元の絵を、歪み修正だけ使って
補正してみました。
たとえば小さい子の絵って、
やたら目や顔を大きく描いたりしませんか?
お父さんお母さんの顔や、
消防車のタイヤといったパーツなど、
自分が見たいところを一番見ているので、
そこが大きくなりがちなんです。
逆にどうでもいいところは小さかったり
おまけ程度の扱いで描いたりします。笑
どこに注目したのかがよくわかる、
子どもならではの一点集中の力ですね。
それに対しバランスを見るというのは、
一歩離れて冷静に全体を客観視する
少し大人な視点です。
小さい時に絵が上手い子というのは、
この客観視のしかたをどこかで
教わったり自分で気付いたりするので、
絵がどんどん上達します。
絵を描く時にこの二つの視点をシフトする
目の使い方を意識してみると、
絵の歪みが小さくなってきます。
他にも、「見る」という作業は
対象物の観察のしかたや造形の理解など、
描くという手の動作の前に
目が大事な役割をしています。
(他の「見る」についてのお話は
また別の機会にでも)
さて、これまで
絵が苦手な人は視野が狭くなりがちで、
今描いている部分を見すぎて
全体のバランスが見えなくなることがある
というお話をしてきましたが、
絵日記学としてお話ししたいのは
そういった絵のコツだけではなく、
その現象を心に置き換えて、
自分の思考や行動の癖に
気付いてもらうことなんです。
特に感受性の子供心が強いタイプの人は
夢中になる子供の目が優位なので、
主観的で、目の前の一つのことに囚われて
冷静に事実が見えなくなりがちです。
絵日記学の『絵力編』で絵を学ぶと、
絵だけでなく日常の中でも
二つの視点からものを見る力が
ついていきます。
そのため、生徒さんの絵日記だったり
感想や個人面談の発言に、
少しずつ客観の意識が芽生えてるんですね。
「客観」といっても、
周りからどう見られるかという
人目を気にして自分を隠すもの
とは全然違う、
感情に飲まれずに自分を離れて見つめ、
その自分の状態を把握し説明できる力です。
これってまさに絵日記学で目指している、
表面的でなくちゃんと中身の伴った
『本当の大人』の姿ですよね。
実際、この『絵力編』の講座以降から、
生徒さんたちの発言のレベルが
急に高度になります。笑
教える講師の身としては、
こんなに嬉しいことはないですね。
それに、絵日記は
自分に起きたことや気持ちを
めいいっぱい自分の主観で書き、
描いたものを客観的に読み返すので、
この二つの視点の切り替えの感覚は
日々絵日記を書いていく中でも
どんどん鍛えられていきます。
二つの視点を持つということは、
現状に囚われてしまっている時に
別の視点から物を見ることで気付き
ブレイクスルーするための
大事なスキルです。
確かに言葉ではよく聞く話ですが、
じゃあ実際、現実では具体的にどうやるの?
というと‥‥
理屈は分かっても、
感覚が自分で掴めないと
こういう言葉って理想論になってしまい、
ただの「知識」になってしまいます。
こういう話で大事なのは、
情報を知るだけではなく
自分がいかにその意味を理解し
実際の生活の中で使えるようになるかです。
そして、そのためにポイントになるのが、
知識でなく感覚を掴むこと。
つまり「体験」なんです。
「あ、こういう感じかー!はいはいはい」
となれるか。
絵日記学の講座では、
毎回知識だけでなく体験を重視しています。
それは、
世の中でよく言われている言葉だけど
感覚にまで落とし込めていないことを、
絵を描くという体験を通して
身に付けてもらうためです。
絵日記を書くと
視点を自由に切り替えられるようになる
というのも、
ちょっと面白いと思いませんか?
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